キャリアポルノと長寿ポルノ

谷本真由美さんの『キャリアポルノは人生の無駄だ』のキャリア・ポルノというのはキャリア・アップのハウツー本や自己啓発本を指しているそうだが、なぜポルノと言うのか分からなかった。

出世や金儲け主義を臆面もなく煽るのが下品だということかと思っていたら

>>谷本真由美が自著において自己啓発書を指して用いた呼び名。読者は自己啓発書を読み、ある種の達成感を覚えるが、読んだだけで満足してしまい行動には移さない、そうした状況を谷本は「キャリアポルノ依存症」と読んでいる<<<(weblio辞書)

という意味だった。

つまり、キャリアを志向する人が手にとるけれど、読んでいるだけで満足してしまって不毛に終わる本というような感じだ。

それを読んで、じゃあ「長寿ポルノ」というのもあるなあ、と思った。

まあキャリア志向して功なり名を遂げた人でも、リタイアすれば、次の目標は長寿志向ということになるのだろう。

現役時代にせっせと自己啓発本を買っている人がリタイアしてから健康本や長寿本を買うのか、同じメンタリティが違う世代に違うタイプのハウツー本アディクション現象をもたらしているのか、どちらだろう。

ビジネス界で成功した人の伝記やハウツーものと、「100歳で現役」系の人の伝記や長寿、健康のハウツーものには確かに共通点がある。

「100歳で現役」系の本でロールモデルになったり健康の秘訣を開陳したりするというタイプの人たちは、谷本さんが「キャリアポルノ」で言うように、普通の人の「99.99999%には関係ない」特別な人たちだ。

健康意識が高く意思が強く自制心があり規則正しい生活を送ることができるとか、遺伝子や環境に特別に恵まれていたとか、特別に運がよかったとか、その複合とかなのである。

いくら長寿の秘訣を披露してくれて日頃の献立や運動のプログラムを開陳してくれたところで、まあ普通の人は、そこまでたどり着かない。

30代でウツになったり、40代で乳がんが発覚したり、50 歳で糖尿病だと言われたり、五十肩になったり、60代で前立腺がんが判明したりして「闘病」本にのめりこむはめになる。

そこでも、「難病を克服した末に100歳で現役」風の本は輝くだろう。

「もともと丈夫な人ではなく大病を克服して立ち直り元気に長生きする人がいる」

というのは

「もともと裕福なうちに生まれたわけではなくひどい貧乏や不幸を体験したけれど克服して社会的に成功した」

というタイプの「キャリアポルノ」と同じく「私にもできるかも」と希望を抱かせてくれるからだ。

でも、誰一人として同じ遺伝子を持って同じ環境を生きている人はいないし同じ病気の同じ症状を生きる人もない。

どんなに奨励されている健康法でも、効くと言われる療法や治療でも、統計的エビデンスがあろうとなかろうと、効く人には効くけれどダメな人にはダメ、なのだ。

幻想でも希望を抱かせてくれるというのは悪いとは思わない。ポルノだって弱者虐待を煽るようなものでなければ全部悪いとは思わない。

けれども、これらの分野がアディクションを起こしやすいということにつけ込んで、安易な、時には悪質な商法が展開されていることは嘆かわしい。

その意味で「ダイエットポルノ」や「美容ポルノ」だってあるかもしれない。

特に今はそういうものの広告がウェブを開くとひしめいていて、中学生がポルノサイトを開いてしまうように、誰もがつい「奇跡の治療法」サイトや「若返り」サイトなどをクリックしてしまうのだ。

リタイアした世代の方がある程度の小金や暇がある分、アンチエイジングポルノや長寿ポルノのターゲットになるかもしれない。

私もその例外ではなく、五十肩の治癒を夢見てずいぶんいろいろなことを試してきた。

読むだけに淫することなくかなりあやしそうな治療にも出かけた。自分のやっていることをつい相対化してしまうので単なる情報ブログになったかもしれない。

持病がある人は、「100歳で現役」系の本やニュースは自分には無縁だと思ってしまうので、「難病克服」の方に目が行く。

でも、いくら「あり得るかもしれない」と思っても、自分にはその体験を文字通り実践する気力も根性も暇も金もチャンスもない場合がほとんどだろう。

私の場合、そういう試行錯誤を通して今は、

難病は克服できなかったけれど騙し騙し生きていてうまく人生の折り合いつけている人の心の持ち方とか、

闘病空しく世を去ってしまったけれど病や死に向かい合う態度やそれによって人間的に成長したことで残された人に力を残してくれた人の残してくれた記録

などの方が好きになった。

これらの記録は「読んでいるだけでその気になって満足する」というよりも、いろいろ読んでいるとその底に流れる生命力の継承の弾みが自分の中にも少しずつ生まれるような気がするからだ。

結局は、「自己啓発」から「自己超越」へと向かって大きな命を意識するのが終着点だから、宗教書を読んでいるのと変わらないかもしれないけれど…

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